本棚を見ていたら昔買った梶井基次郎の『檸檬』があった。

 9頁しかない短い小説なのだが、内容はメチャクチャで、

 借金まみれで、病気がちで、友達のいない主人公が、八百屋で買ったレモン(檸檬)を爆弾に見立てて、高級品が多数並ぶ(つまり金持ち御用達の)丸善を爆破する”妄想”をする、というもの。

 高校・大学のころは、何じゃこりゃあという感じで全く理解できなかったが、田舎で友達の居ない生活を送っていると、非常によく分かる。人を相手にしていないと、心の中の不満を、他人に対してではなく、世界(≒社会)に対して直接抱くようになるため、世界を爆弾で吹き飛ばしたくなるのだ。

 *似たような話は世界中にあって、秋葉原通り魔事件もこんな動機だろう(推測)し、映画では『タクシー・ドライバー』、漫画では『ザ・ワールド・イズ・マイン』が同様のテーマを扱っている。

 精神的にとても健全とはいえないので、さっさと合格し、この地を出て行かないといけないな、ということを自覚させられた。