バルザック『ゴプセック』を読んだ。

 ストーリーがきわめてごちゃごちゃしており、要約すると以下。

 ①娘が、②ロクでもない女の③息子と付き合っていることを気に病む④貴婦人に対し、⑤弁護士が、③はそんなに悪い男ではないと説くために、②と⑥金貸しゴプセックとの金銭をめぐる紛争を語る過程で、⑥の人物像が浮かび上がる。

 こんな調子であるから、注意深く読まないと、誰が誰に対して誰の話をしているのかが分からなくなる(たぶん訳も悪い)。しかしおもしろくないかと言われるとこれが滅法おもしろいのだ。

 ストーリーの肝は、金銭欲に囚われた者がことごとく破滅していく点にある。

 まず、金貸しゴプセック(⑥)は、レストー伯爵夫人(②)*1を経済的に破滅させる。レストー伯爵夫人は、愛人との豪奢な生活をやめることができず、金貸しゴプセックから金を借りるも、夫のダイヤモンドをその担保に入れてしまい、これがきっかけで夫婦仲は崩壊するのだ。

 夫の死の間際、相続権が自分と自分(と愛人)の子にないのではと邪推したレストー伯爵夫人は、夫の遺言を焼き捨てるが、これが仇となり、金貸しゴプセックに相続財産のすべてを巻き上げられてしまう。

 他方、金貸しゴプセックの方も大して幸福ではない。ラストで彼は死ぬが、その遺産の帰属先として指定したのは娼婦である。(しかも別作品で、この娼婦は莫大な遺産を受け取れずに、騙されて死ぬということが判明する)。

 死に行く金貸しゴプセックのもとに残ったのは債務者から巻き上げた大量の担保の品である。乱雑に積まれた商品の管理状態は悪く、高給食材は腐ってウジが這い回っている。

 金で幸せにはなれないという一貫したテーマがここにも表れている。

 (つーかバルザックこんなんばっかりやなw)

*1:ちなみにこの女はゴリオ爺さんの娘である。