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観れば一発で分かるのだが、両方ともストーリーはほぼ同じだ。社会に出ることを拒否する娘を心配した父親が、何とか娘を家から出す、というお話。
しかしテーマは異なり、『晩春』ではその過程で父娘の相互の愛が描かれる。父娘両者共に、自分の幸せを犠牲にしてまで、相手の幸せを実現しようとする姿は感動的だ。
他方、『もらとりあむタマ子』では、父娘がどう見ても愛し合っていない。ラストでは、父が娘に対し「就職するしないにかかわらず家から出て行け」と宣告し、自分はさっさと再婚することが示唆されて終わる。
主人公タマ子は作中を通してほとんど成長していない*1ため、追い出されたあとのタマ子の前途は多難だ。作中の雰囲気がギャグっぽいのと、タマ子には東京で暮らす母親というカードがまだ残っているため、悲壮感は全くないのだが、よく考えてみると救いがない。
前田敦子主演というだけで観始めたのだが、親子愛について考えさせられるとは思わなかった。
[追記]
『もらとりあむタマ子』では観客から、小津安二郎の『晩春』(父と娘の役割は逆バージョンのw)を想起させられたとの指摘も。山下監督は実は『東京物語』しか観たことがなく、日本でも『もらとりあむタマ子』を観た人から同じようなことをいわれて初めて『晩春』を観たのだそう。
— 岡本珠希|Tamaki Okamoto (@tmk_kmt) 2014年1月24日
ウソだろおい!
*1:作中で食事の準備をしたりするシーンがあるが、基本的にはほとんど変わっていない