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 三木聡 『転々』を観た。

 

 貧乏学生である主人公(オダギリジョー)が、借金取りのおっさん(三浦友和)から、妻を殺したため霞ヶ関の警察署に行くが、付き合ってくれたら金をやる、と言われ、付いていくというストーリー。

 

 ここまでだと荒唐無稽でいまいちノれないのだが、道中、おっさんの愛人(小泉今日子)宅に泊まるところで話はいきなり面白くなる。というのも、偶然、愛人の親戚の女の子(吉高由里子)が泊まりに来たため、不自然に思われないように、主人公が息子、おっさんが親父、愛人がお母さんという擬似家族を演じることになるからだ。

 

 実際には家族ごっこをしているだけなのだが、家庭が崩壊していた主人公にとっては、はじめて本物の家族を持ったように思えてならない。しかもその家族というのが、お母さんが小泉今日子で、父親三浦友和、妹が吉高由里子なのだからなおさらだ。

 

 主人公はこんな生活がずっと続けばいいとさえ思う(観客もこの世界観に浸っていたいと思う)のだが、ある日「お母さん」から今日の夕飯がカレーだと知らされ、落ち込んでしまう(観客も落ち込む)。というのも、愛人宅に来る前におっさんから、自首の前日にはカレーを食うつもりだと知らされていたからだ。

 

 カレーを食いながら主人公はたまらず泣いてしまうのだが、「妹」と「お母さん」は何のことだか分からない。

 翌朝、2人で警察署に向かい、おっさんが自首して映画は終わる。

 

 理想的な家族が一夜にして無くなってしまう様は観ていて非常に悲しく、胸が締め付けられた。家族の大切さを描いたいい映画だと思う。

 

 ちなみに園子温紀子の食卓』とジェリー・シャッツバーグスケアクロウ』がどうも元ネタらしい。機会があれば観たい。