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 『ファイト・クラブ』という映画がある。

 主人公の「ぼく」はまあまあの会社でそこそこの給料を貰うサラリーマンで、趣味はIKEAの家具を買うことである。しかしある日、気付いてしまう。自分のファッション、インテリア、食生活など、全てがテレビが提供するライフスタイルから選択したものにすぎないということに。さらに考えてみれば、そこそこの大学を出て、まあまあの会社に就職するというこれまでの人生も、社会が決めたレールに乗っているにすぎない。自分自身で人生を何も決めていないことに悩み、主人公は不眠症に陥る。

 そんなある日「ぼく」が出会ったのがタイラー・ダーデンブラッド・ピット)という男である。タイラー・ダーデンは「ぼく」に語りかけるのを通して、消費社会に染まった我々観客に語りかける。

 

「ほとんどの人間がガソリンスタンドの店員か、ウエイターだ。もしくは会社の奴隷。広告を見ちゃ車や服が欲しくなる。嫌な仕事をして、要りもしない車や服を買わされるわけだ。俺たちは歴史のはざまで生まれ、生きる目標も場所もない。新たな世界大戦も大恐慌もない。今あるのは魂の戦争。毎日の生活が大恐慌。テレビにこうそそのかされる、いつか自分は金持ちかスーパースターかロックスターだって。だが違う。少しずつ現実を知り、とうとう頭がキレた!」

 

「職業がなんだ?財産がなんて関係無い。車も関係ない。財布の中身もそのクソッタレなブランドも関係無い。お前らは歌って踊るだけのこの世のクズだ。」

 

「ウジ虫どもうぬぼれるな!お前らは美しくもなければ特別なもんでもない。他と同様朽ち果てて消えるだけの有機物質だ。」

 
 ラストは「ぼく」が自分の頭を拳銃で撃ち抜き死亡するが、タイラーと一体化した姿で再生する。そして事前に仕掛けた爆弾により崩れ落ちるクレジットカード会社(消費社会の象徴)のビルを見ながら一言つぶやく。

 

「これからは何もかもよくなる。」