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『ミツバチのささやき』(1973年、スペイン映画)を観た。
なぜ観たのかといえば、本作が『トトロ』の元ネタという話を聞いたからだ(実際あらすじはほぼ同じで、妖精が見える少女が迷子になってしまい、みんなが探し回る話である)。
* ちなみに『パンズ・ラビリンス』は『ミツバチのささやき』+『トトロ』らしい。
ただ、映画の狙いが当時のフランコ独裁政権の批判にあり、スペイン内戦下で作られたために、検閲を逃れようとして非常に難解なつくりとなっている(というか解説を聞かないと内容がさっぱり分からない)。
それでも最後まで観れてしまうのは、主人公2人(つまりスペインのメイとサツキ)がめちゃくちゃ美少女だからだろう。
スペインのメイちゃん。
スペインのサツキ。
興味深かったのは、両作品(『ミツバチのささやき』と『となりのトトロ』)のテーマの違いが、登場人物の性格を変えているという点である。
両作品にはともに、①「子どものように偏見のない無垢な視点で物事を見ることが未来を開く」というテーマがある。
しかし、『ミツバチのささやき』にはこれに加えて②「このような人間がスペイン内戦後のスペインに求められるはずだ」というテーマがある。
『ミツバチのささやき』では、この第2テーマを表現するために、周囲の人間が皆いけすかない人間となっている。
たとえば、お父さんは弾圧を怖れて何も表現できないインテリになっているし、お母さんは過去を懐かしむだけの人間となり、お姉ちゃん(スペインのサツキ)は暴力的なフランコ独裁政権に順応的な少女となっている。
主人公(スペインのメイちゃん)はこうした家族に疑問を持ち、家出してしまう。こういうやつらはこれからのスペインにいらないということの表現である。
しかし、スペイン内戦なんか知ったこっちゃない日本においては、第1テーマだけが継承された。
その結果、家族を悪い人物として描く必要がなくなり、『となりのトトロ』の家族はお互いを愛し合ういい人となった。
ちなみに『パンズ・ラビリンス』に上記テーマを当てはめると、「無垢な視点で物事を見ても結局撃ち殺されるよ」というひどいことになるので、テーマは別に考えないといけない。