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『プラダを着た悪魔』を観た。
◆あらすじ
一流大学を成績優秀で卒業したアンディ(ダサい)は、本当はジャーナリスト志望であったが、何の縁か有名ファッション誌『RUNWAY』の職に就いてしまう。
そこで出会った鬼上司ミランダの理不尽な要求にアンディは苦労するが、何とか期待に応えていき出世の道を歩んでいく(同時にお洒落になっていく)。しかし栄達の陰で、アンディは恋人や友人をないがしろにするようになり、次第に自分の人生に疑問を持つようになる。
◆考えたこと
テーマのしっかりした秀作だと思った。本作の主要テーマは(見方にもよるが)、①仕事のためにプライベート(恋人、友人、家族)を犠牲にすることの是非、②人生は物質的な成功(出世や金持ちになること)のためではなく、やりたいことをするために使うべきだということ、だろう。
以下、それぞれについて詳論する。
◇テーマ① 仕事のためにプライベート(恋人、友人、家族)を犠牲にすることの是非
本作の登場人物は、皆仕事で栄達していく陰で、何かを犠牲にしている。
主人公アンディはきらびやかな世界で出世し、またお洒落になっていく過程で、くだらない仕事(作中では「家賃稼ぎの仕事」と表現)をしている友人・恋人に対していけ好かない態度を取るようになり、次第に彼らと対立することになる。
他方、鬼上司ミランダは、ファッション界での圧倒的な成功の裏で、離婚問題に頭を悩ませている。同僚エミリーは仕事の過程で健康を害し、同じく同僚のナイジェルは長年の希望であった独立のチャンスを無残に奪い去られている。
本作は、これらの犠牲を描くことを通して、仕事における出世や栄達にそこまでの価値があるのか?と問いかけてくる。
そしてこの問いに対する本作の答えは、「少なくともアンディがしてきた仕事については、その価値は無い」というものだろう。というのも、アンディのやっている仕事が徹頭徹尾くだらないものとして描かれているからだ。
アンディが仕事をしている姿は一見きらびやかであるが、実際にやってきたことを列挙すると、(ⅰ)ミランダのコーヒーを買ってくること、(ⅱ)長時間の電話番、(ⅲ)ハリケーンの中飛ぶ飛行機を探すこと(無茶)、(ⅳ)ミランダの家に本を届けること、(ⅴ)ハリーポッターの次回作を発売前に手に入れること、(ⅵ)パーティの出席者の名前をミランダにこっそり教えること、等々である。
これらを一見して分かるように、アンディのやってきたことは本来どうでもいい仕事ばかりである。しかも、後述するように、これはアンディが本来志望していた仕事ではなかった。
本作は、こんなにくだらない仕事をするために、大切な友人や恋人や家族を犠牲にしていいのか?と問いかけているのである。
テーマ② 人生は物質的な成功(出世や金持ちになること)のためではなく、やりたいことをするために使うべきだということ
本作でアンディは、きらびやかなファッション業界における栄達に目を取られ、本来の志望であるジャーナリストの道を見失ってしまう。しかしそこでいくら栄達したところで幸せにはなれないことに気が付き、ラストシーンで、今まで手にしてきた高級な服を全て捨て、もとのダサい格好に戻って再びジャーナリストを志すことになる。
ここには、物質的な成功を目指したところで幸せになれないよ、やりたいことをやらないとダメだよ、というメッセージがある。
*ちなみにこのテーマは『桐島、部活やめるってよ』、『バードマン』、『シティ・オブ・ゴッド』、『さくらの唄』などで散々論じられているテーマでもある。
まとめ
結局、金や出世のためにやりたいことをやらなかったり、大切な人を犠牲にしだすとロクなことがないよ、というお話だった。分かっちゃいるけどできないんだな、これが。